地域包括ケアシステムの一翼を担う天辰病院(鹿児島市桜ヶ丘)は、医療業務の質向上の一環にクラウド型電子カルテ・レセコンを2025年4月に導入。その操作端末に ASUS Chromebook CX34 Flip (CX3401)と ASUS Chromebook Flip CX5 (CX5601)を採用した。脱・紙カルテにより医療現場の改善を進め、業務時間の大幅な削減も実現。医療DXを通じて、安全かつ快適な業務環境へのシフトを推進している天辰病院の事例を紹介する。
1980年に創立した天辰病院は、高齢化率は比較的高いものの地方都市のアクセスしやすい鹿児島市桜ヶ丘に位置し、地域包括ケア病床38床を備えた地域密着型の中小病院。診療科目に、外科、内科(胃腸科)、耳鼻咽喉科、眼科、リハビリテーション科を有する。現在、2代目の天辰仁彦(あまたつまさひこ)院長は消化器外科が専門であり、がん患者の治療や緩和ケア等も行っている。
町内500メートル圏内には鹿児島大学病院があり、天辰病院では県全体から来院する難病患者の長期入院支援も多くあることから多様な患者に対応。また、遠方に住む患者もいるため、 社会的な支援の観点から、社会福祉士、地域のケアマネージャー、家族等と連携していく上で、取り扱う情報量も非常に多い病院だという。
天辰仁彦院長が同病院に着任した2018年頃から、電子カルテの導入を検討していたという。しかし、システムの機能を多く求めれば高額で予算が大きな負担となり、また、せっかく導入しても、セキュリティに関する問題が生じれば病院運営のリスクにもなりかねないため、導入には慎重になっていたと天辰院長は振り返る。
そうした中、システム利用にはクラウドが理想的だと考えていたところ、運用に実績があるヘンリー社が良さそうだと話が進展していった。
「ヘンリー社の提供する電⼦カルテ・レセコン(診療報酬明細書)はクラウド上で利用でき、セキュリティも高信頼だと聞きました。ChromeOS™の端末は使ったことがなかったのですが、私自身が以前から Googleスプレッドシート™ など Google Workspace™ を使用していたこともあり、今回 ASUS Chromebookを導入しました」。
Chromebook™ は、クラウドを活用した軽快な動作とシンプルで強固なセキュリティが特徴のChromeOSの端末。インターネット接続を前提とした設計で、Google のサービスとの親和性が高い。
天辰病院はクラウド型電子カルテ「Henry」を2025年4月に導入。それに伴いASUS Chromebook CX34 Flip (CX3401)とASUS Chromebook Flip CX5 (CX5601)の2機種を併せて20台導入している。
同病院 放射線技師でシステム担当の永瀬勇介氏は、「セキュリティに対する信頼、また、スタッフは端末操作に得手・不得手と個人差があるため使い勝手が良いものとなると、ASUS Chromebookが第一選択だと感じていました」と話す。起動の速さの点でもASUS Chromebookに注目していた。
理学療法士で同じくシステム担当の恵 誠氏は、「ASUS Chromebookは1日中持ち歩いてもバッテリーが長持ち。堅牢性もあって品質の良い端末だと感じています」と話す。
CX3401(14型ディスプレイ)は天辰院長や看護師などスタッフが病棟を移動して持ち歩く際に活用し、CX5601(16型ディスプレイ)は大画面に加えてテンキーも付属しているため、移動を伴わない事務作業に活用。用途に応じて使い分けているという。
ASUS Chromebookにより業務効率が大きく変化したと天辰院長は話す。紙カルテ時代は、看護師から電話を受け、現場に行ってから指示を書き込むことが通例。これまではプライベートの携帯と仕事用のパソコンを使用していたが、ASUS Chromebookが1台あれば、ほぼ全ての業務を完結できる。
「ASUS Chromebookで電子カルテを開きながら、Google スプレッドシート で記録や情報を見つつ、対応指示を出せます。もともと病院ではWindowsを使っていたのでキー操作は多少慣れが必要ですが、キータッチも申し分なく、特にスクリーンショットをワンタッチでできることが便利で、所見をコピーして貼り付ける作業がとてもラクです」と使い心地を語る。Google スプレッドシートやドキュメントは付帯するURLをクリックすればすぐにファイルを開くことができ、クラウド型電子カルテ・レセコンと同時に参照もできるため相性が良いという。
看護師も、検温や看護記録、処置の入力、指示内容の確認など、現在は全ての業務にASUS Chromebook を活用。電子カルテ・レセコンのほか、天辰院長が作成するGoogle スプレッドシートの情報なども併せて閲覧し情報共有を行っている。
ASUS Chromebook は、看護師が病室へ向かう際に使うナースカートに載せて持ち運んでおり、患者と対面している時でも医師からの指示確認などがいつでも行える。病棟で端末の盗難や落下がないよう、端末側面にあるケンジントンロック(Kensingtonナノセキュリティスロット)にセキュリティワイヤーを使ってカートにしっかりと固定。物理的なセキュリティも万全の対策を取っている。
看護師自身が病院外部と直接やり取りすることはないが、たとえばソーシャルワーカーなどが患者の記録をデータに残すことで、紙カルテ時代には得られなかった情報共有も可能になった。
同病院 看護部 吉永理恵主任は、「私は病棟勤務ですが、病棟の患者さんだけでなく、外来や今後入院予定の患者さんの情報も電子カルテに事前登録や閲覧ができるため、問い合わせにも幅広く対応できるようになったことがとても有り難いです」と話す。
他にも、これまではスタッフ内で話し合った内容を要件ごとにノートで使い分けていたが、現在は Google Workspace™ 上で情報の一元化ができるよう進めている。また、従来はスタッフ間の全体連絡に各自のスマホを使ったビジネス向けチャットツールを利用しつつ、電話や紙での回覧も併用していた。休日のスタッフにも仕事の連絡が届くことでストレスが生じるなど課題もあったが、こちらもGoogle Workspaceを活用し、無理なく全スタッフに情報が行き渡るよう取り組みを進めているところだという。
吉永主任は、ASUS Chromebook の第一印象で驚いた機能に「タッチパネル」を挙げる。「看護師の平均年齢は高めですが、思っていたよりみんな操作の覚えが早くて、『最初の1カ月だけでこれだけできたね』と。他のパソコンも思わず画面にタッチしてしまうほどみんな使い慣れてきています」と明かす。
ASUS Chromebook は機能がシンプル。スマホ感覚で直感的に操作できることがスタッフに好評だと永瀬氏は話す。恵氏は、取引先の承認サインなどにスタイラスペン(ASUS USI Pen)を使って画面に直接記入してもらう活用法なども、将来的に取り入れたいと考えているという。
クラウド型電子カルテ・レセコン導入とASUS Chromebook 活用により、スタッフの働き方にも大きな成果が表れている。驚くことに、週20時間あった残業が5時間まで減少したスタッフもいるという。
紙カルテでは誰かが記録している間は他の人が扱えず、「先にいいですよ」と譲り合うこともたびたび。今ではスタッフがそれぞれのタイミングで自由に作業できるようなり、また、事務作業のレセプト作成をクラウド上で行えるようになったことも業務効率の大きな要因だろうと恵氏は話す。
看護師もこれまでは、病室を回った後に患者の氏名などを紙カルテ1枚1枚に全て手書きしていた。吉永主任は、「今では病室を回りながら入力できます。大幅に時間短縮できて、逆に何か仕事を探すほどです(笑)」と働き方にも余裕が生まれている。
待つ時間や手間が省けたことで、その分を患者の対応に充てることができる。限りあるリソースを注力すべきことに使える。永瀬氏は働き方の好循環を感じているという。
永瀬氏と恵氏は、それぞれ専門分野で医療に従事しつつ、院内のシステム担当を務めており、多忙な中で端末の管理を行っている。そうした立場からも、ASUS Chromebook の運用や管理のしやすさを実感しているという。
「システム担当は兼務であり、私はパソコン関連を勉強しているわけではないですが、そういう人でもASUS Chromebook は管理しやすいです」と永瀬氏。その上で、「今は医療機器との連携や部署によってはWindowsも併用していて、GCPW(Windows用Google認証情報プロバイダ)で管理コンソールから管理していますが、今後 ChromeOS のみになっていくとより使いやすくなっていくかなと感じます」と期待を込める。特に医療機器との連携がクリアになれば、今後は ASUS Chromebook の稼働率がより多くを占めるようになるだろうという。
恵氏も、「ASUS Chromebook は安定していて扱いやすい」と話す。端末ごとではなくアカウントに対して設定を行えばよいので、たとえ端末自体にトラブルが生じても、他の端末にアカウントを設定することで適用できるため運用がとてもラク。さらに、低コストであることも大きな魅力だという。
ASUS Chromebook について天辰院長は、「費用対効果でここまでのクオリティの端末は本当になかなかないと思います」と高く評価する。吉永主任は、Google ドライブ™ なども使いこなし、院内の情報共有をさらに円滑に行えるようになりたいと意欲的。永瀬氏と恵氏も、医療業界、医療機器にこれからも柔軟に対応し続けてほしいと将来性にも期待を寄せる。
地域の医療機関や介護関連事業者等と連携を深めつつ、地域医療の中核を担う天辰病院。今後も同病院の医療DXを支える基盤として、クラウド型電子カルテ・レセコンとASUS Chromebook が、業務の安全性と快適性を促進する原動力となることが期待される。